h2 ノースエンド先生の部屋(番外編)49
 

(第481話)その他の国の映画の少年(その2)

シスター 夏のわかれ道

2021年、中国映画。イン・ルオシン監督。

『我的姐姐(ウォ・デ・ジェジェ)』=私のお姉さん、という題で、主人公はアン・ラン(チャン・ツィフォン)。

看護師をしながら北京の大学院を目指している。一人暮らしで、両親とは疎遠になっており、その両親が交通事故で亡くなり、6歳の弟ズーハン(ダレン・キム)が残される。

叔父、叔母のところも事情があり、彼女のところに押し付けられる。わがままなズーハンにふりまわされるが、彼女自身の辛い過去が思い出される。

養子の話がでるが、ズーハンは「言うことをきくから売らないで。お姉ちゃんと一緒にいたい」といじらしさを見せる。アン・ランの彼氏とのことを含め、いろいろあるが、進学のための勉強のために養子に出す。

ある日彼女はその家に行くが、養父母は二度と会いに来ないという誓約書にサインを求めるが、心が揺れ、なかなかサインが出来ない。そしてとうとう弟を連れ出す。雨の中サッカーボールを蹴りあう二人の姿で終わる。

人情ものに流されがちだが、程よい抑制がきいている。男性優位の中国情勢もさりげなく描いている。ズーハンはわがままな反面、公衆トイレに入って戻ると、待っているはずの姉がいず、寂しい思いをして泣くという姿を好演していた。彼は中国と韓国のハーフで、別名ヤオユアン・ジンである。

叔母の家に飾ってあったマトリョーシカ、出稼ぎの苦労の思い出の品であるが、こうした小物の扱いも良かった。

パーフェクト・ドライバー

2022年、韓国映画。パク・テミン監督。

副題に「成功率100%の女」とついている。

郵便でも宅配便でも送れないワケあり荷物を届ける特送のドライバー、ウナ(パク・ソダム)は天才的な運転テクニックをもっていた。

ある日受けた特命は、海外へ逃亡をもくろむ賭博ブローカーのドゥシク(ヨン・ウジン)とその息子ソウォン(チョン・ヒョンジュン、2011生)を港へ運ぶことだったが、父はやられ、逃げてきたソウォンを助ける。

ソウォンは巨額の貸金庫の鍵を持っていることから、殺し屋、悪徳警官に追われ、さらにウナは脱北の経験があり、国家情報院までからんでくる。

逃走劇は派手なドリフトやカーチェイスなど見応えがある。しかし、暴力シーンは正視に耐えられない。
ソウォンは恐怖でおもらしをしてしまい、その後はパジャマ姿に。そして自分を捨てた母を捜すいじらしさ、チョン・ヒョンジュンはよく演じていた。

ラストは養護施設で幸せに暮らすソウォン。ある朝バスに遅れ、そこに車が…。ウナと感激の再会をしハッピーエンドの予定調和。

パク・ソダム、チョン・ヒョンジュンは『パラサイト 半地下の家族』(2019)に出演作していた。

丘の上の本屋さん

2021年、イタリア映画。クラウディオ・ロッシ・マッシミ監督。

原題は「幸福への権利」。温かい、とにかく心温まる作品である。
古本屋を営むリベロ爺さんを演じたレモ・ジローネの名演が光る。優しいまなざし、軟らかい物腰、言葉遣い、彼の全てだ。人生の年輪を感じる。

隣のカフェのニコラ(コッラード・フォルトゥーナ)と仲が良く、彼が思いを寄せるキアラとの仲立ちをする。

この作品のメインはアフリカのブルキナファソからの移民の少年エシエン(ディディー・ローレンツ・チュンブ)とのかかわりである。本に興味のあるエシエンは、買う金がないというので、リベロは本を貸し与える。

最初はマンガ本で、公園で読んでいると、ベンチの男が「マンガが好きなら、うちに沢山あるよ、来ないかい?」と、下心がありそうだと見抜いて、エシエンは離れる。その後も本を返しに行っては、次の本を貸してくれる。それが、童話から、読みやすい小説、そして長編小説へとグレードアップする。

その都度リベロはエシエンに感想や考え方を聞き、温かく受け止め助言を与える。そして、この本は貸すのではなく、君にあげると、まるで自分の運命を悟っていたかのように、ある本を手渡す。

リベロは亡くなり、エシエンに手紙が残された。それを読んだ後にもらった本が何の本かわかる。『世界人権宣言』の本だった。この描き方がニクイ、最後まで明かにしなかったのだ。この本は彼にとって一生涯の生き方の指針となるだろう。またリベロを思い出すよすがとなるだろう。

時々挿入される舞台となったチヴィテッラ・デル・トロントの風景が美しい。
リベロもエシエンも家庭環境等が全く描かれない。だからこそ二人の関係が余計な情報を拝して描かれる。大きく目を見開いて、エシエンがリベロから人生や生き方を学び、成長していく姿が見てとれた。



 

(第482話)その他落穂拾い(その3)


①『ぼくの歌が聴こえたら』
 2021年、韓国映画。ヤン・ジョンウン監督。

英語題は 『The Box 』。少年時代のトラウマで箱の中だけの天才ミュージシャンのチ・ジフン(チョンヨル)と、音楽プロデューサーのキム・ミンス(チョ・タルファン)とが出会い、ライブツァーで各地を回り、運命を切り開いていく。美しい歌の数々と各地の景色も楽しめる。少年時代のチフンをキム・スンファンが演じていた。



②『彼女のいない部屋』
 2021年、フランス映画。マチュー・アルマリック監督。

主人公の女性クラリス(ビッキー・クリープス)はある朝、家族を残して家を出る。家族は夫と二人の子供だ。ストーリーラインは混乱して、先が読めないし、前後もなかなかつながらない。現実と非現実の混在があり、回想なのか判断が難しい。まるでジグソーパズルのようにつなぎあわさっていく。古典派から現代音楽までのピアノ曲に満ちている。息子ポール役をサシャ・アルディリが演じていた。



③『リミット』
 2022年、韓国映画。イ・スンジュン監督。

連続児童誘拐事件が起き、今日も女児アジンが誘拐される。生活安全課のソウン(イ・ジョンヒョン)が偽装捜査のため母親になりすまし犯人と連絡をとるが、バレて、彼女の息子ダヒョンも誘拐される…。誘拐の裏に臓器売買の目的があった。身代金でアジンは戻るが、ソウンは息子の命を守るために単独行動をとるが、思わぬ展開になる。ダヒョン役をチェ・イェチャンが演じていた。



④『RRR』
 2022年、インド映画。S・S・ラージャマウリ監督。

3時間の長尺のボリウッド映画。英国の植民地時代を舞台にしたアクション大作である。二人の男ビーム(N・T・ラーマ・ラオJr)とラーマ(ラーム・チャラン)の出会いと宿命の行方を追う。古くは連続活劇的要素があり、カンフーやMIの動きのCG技術が加わり、ランボーを思わせるダイ・ハード(なかなか死なない)な主人公である。ツッコミどころはあるにしろ、ワクワク、ハラハラする見せる映画に徹している。もちろん歌や踊りも忘れてないが、銃撃シーンや刑の執行など残酷なシーンもある。

ラーマの少年時代をヴァルン・ブッダデーヴが演じていた(画像上)。銃撃の腕前があり、父の加勢に行くが、母と弟が殺され、傷ついた父の最期を託されたことが後にわかる。魚を捕って売る少年(画像下)が川にいた時に鉄橋での列車事故で危ないところを二人に救われるシーンは見ものであった。



⑤『奈落のマイホーム』
 2021年、韓国映画。キム・ジフン監督。

実に発想が面白いディザスター映画、前半は喜劇調でもある。11年越しでマンションを購入したトンウォン(キム・ソンギュン)、妻と息子スチャン(キム・ゴヌ、 2011生、画像上)と越してくる。いきなり同じマンションに住むマンスと衝突する。さらに床に置いたビー玉が転がり、悪い予感が…。トンウォンは同僚を招き引っ越して祝いをして、同僚は泊まり、翌日地震のような轟音とともに500メートルの巨大陥没穴(シンクホール)に落ちていく。

遅々として進まない救助、さらに隣のマンションも倒れ、さてこの極限状態をどうする、どうなる…と見せる。5人の大人とスチャンは、必死にサバイバルを試みる。奇抜なアイデアもあり、ラストはホッとさせられる。202号室の引きこもりのような少年ソンフン(オ・ジャフン、 2009生、画像下)もいたが、彼は命を落とす。



⑥『イップ・マン葉問』
 2010年、香港映画。ウィルソン・イップ監督。

『イップ・マン序章』(2008)に続く伝記カンフー映画2作目。随所に見せどころがあり、面白く見られた。時代は1949年、詠春拳のイップ・マン(ドニー・イェン)は妻子とともに香港へ移住する。しきたりで、さまざまな門派の元締めのホン(サモ・ハン・キンポー)は、イップに各師範との対決を求め、テーブルの上での格闘は見応えがある。

後半のボクサーとの異種格闘技戦は、激しすぎるし、ホンはこれで命を落とす。死闘の末、イップが勝利する。
画像上は、喜ぶ息子(リー・チャク)。映画の最後に少年ブルース・リーが弟子入りを志願してきて、大きくなったらおいでと言われるところで終わる(画像下)。演じていたのは蒋岱言(ジァン・ダイヤン)。




⑦『人質 韓国トップスター誘拐事件』
 2021年、韓国映画。ビル・ガムソン監督。

タイトルで内容がわかるサスペンス、アクション映画。トップ俳優のファン・ジョンミン(自身)は帰宅途中拉致される。大金目当てで、犯人は猟奇殺人事件を起こしたグループで、知能犯もいればバカもいる。仲違いを簡単に起こす。警察と犯人のカーチェイスは見せた。荒っぽいが勢いで見せた。キャストにジョンミンの妻と息子があるが写真での登場だけ。息子役はチョン・ジュニョン。



⑧『赤い影』
 1973年、イギリス/イタリア映画。ニコラス・ローグ監督。

デュ・モーリアの短編の映画化。死生観ただようホラー、サスペンス映画。娘クリスティンを池で亡くす辛い過去をもつイギリス人の夫妻。息子を寄宿学校に預け、夫の仕事で夫婦でベネチアに来ている。不思議な老姉妹と出会い、霊感のある盲目のヘザーはクリスティンの姿が見えるという。娘の着ていたレインコートの赤のイメージにとらわれる。息子ジョニー役をニコラス・サルターが演じていた。



⑨『サスペリアPART2』
 1975年、イタリア映画。ダリオ・アルジェント監督。

『サスペリア』より2年前に作られたのにPART2?同監督の「深紅」という題の作品で、話題になった『サスペリア』に便乗したもの。主人公はマーク(デヴィッド・ヘミングス)で、殺人を目撃し謎の解明をしようとする。視覚トリックが巧みであり、犯人がすでに映像にあった。人形を使ったシーンも怖い。友人カルロが幼い頃、精神を病んだ母が父を刺殺するのを目の当たりにする。演じていたのはヤコポ・マリアーニ。



⑩『サスペリア』
 1977年、イタリア映画。ダリオ・アルジェント監督。

「決してひとりでは見ないでください」という宣伝文句、そして女性観客に1000万円ショック保険をつけたことでも話題をよんだ。原色が視覚にまばゆく、サーカム・サウンドが聴覚を刺激する。ドイツの名門バレエ学校にアメリカからスージーがやって来るが、それ以来周囲で不可解な出来事が起こる。スプラッター・ホラーの代表作。学校の勤め人の息子アルベルトをヤコポ・マリアーニが演じていた。




 

(第483話)日本映画の少年(その126)

めんたいぴりり

2016年、江口カン監督。

川原健の原作で、2013年にテレビドラマ化され、その劇場版。博多版『三丁目の夕日』とも言うべきほのぼのとした人情ドラマで、昭和30年代の良き時代を描いている。

西鉄ライオンズの稲尾投手のことや、山笠の風物も加えられている。

主人公は海野俊之(博多華丸)で、福岡の中洲で妻(富田靖子)と食料品店「ふくのや」を経営している。二人の息子、健一(山時聡真)と勝(増永成遥)がいる。

海野は、二人が出会った釜山での経験からめんたいづくりに努め、それが認められ、広まるさまを描いたもので、海野の楽天的でお人好しの性格がよく表出されていた。スケトウダラの化身?との幻想的なシーンもある。

英子という女の子(豊嶋花)のエピソードがほほえましい。店からソーセージを盗んだところを見逃し、さらにめんたいこをあげる。後に健一の同級生とわかり、家庭事情から遠足のリュック、靴がほしいが…。

それに海野はひと肌脱ぐ、足長おじさんとして…。海野は英子がめんたいこがおいしかったという言葉が何よりも嬉しかった。

人情ドラマとして、テンポ良く展開する。登場人物が生き生きとしているが、次男の勝は冷静な感じだ。この映画を見ると、めんたいこを食べ、「おいしか」「うまか」と言ってみたくなる。


この続編として、2023年に同じ監督により『めんたいぴりり パンジーの花』が作られた。
「ふくのや」は繁盛して店構えも良くなった。ツルというおばあさんのたこ焼きの屋台のこと、町をパンジーの花できれいにしようとする夢、従業員の八重山の恋のことなどのエピソードが、重ねられる。

海野のお人好しぶりは相変わらずだが、前作のような快調なテンポの勢いが落ちた感じで、人情ドラマとしてじっくり描いた感じだ。息子健一を前作で次男を演じた増永成遥が、勝を菊地拓真が演じていた。

『めんたいぴりり パンジーの花』(2023年)

近江商人、走る

2022年、三野龍一監督。

江戸時代の近江商人の活躍を描いたもの。主人公は銀次(上村侑)で、冒頭子供時代が描かれる。

銀次(小鷹狩八=こだかり・えいと)は父の農業を手伝い、収穫した大根を売りに行くもうまくいかず、そこで出会った薬売りの喜平(村田秀亮)が、買い取ってくれる。

家に帰ると父は亡くなっていた。その後も喜平から人として生き方を教わり、大津の米問屋の大善屋を訪ねるよう言われ、そこで丁稚になる。

それから5年後、銀次は商才を発揮し、店の仕事に加え、町の人々のために尽力する。しかし、奉行の悪巧みにより大善屋が莫大な借金をかかえ、銀次はこの難局を乗りきろうと、全員態勢で裁定取引の情報収集をする。丁稚の梅吉(歳内王太)と音吉(松藤史恩)も協力する。

ビジネス時代劇のキャッチフレーズのとおり、時代劇エンタである。ラストは勧善懲悪の予定調和であるが、ご都合主義もあり、スッキリ感に至らなかった。

   喜平と                楓と                銀次と、梅吉、音吉

禁じられた遊び

2023年、中田秀夫監督。

清水カルマの小説の映画化で、中田ホラーがここでもいかんなく発揮されている。

伊原直人(重岡大毅)は妻の美雪(ファーストサマーウイカ)と息子の春翔(正垣湊都)と幸せに暮らしていた。ある日妻と息子が交通事故で、妻は帰らぬ人に、春翔も一度死亡を告げられるが、雷が鳴り、生き返る。

父が「トカゲのしっぽを埋めればよみがえる」と冗談で言ったことを春翔は純粋に信じて、ちぎれた母の指を埋めて、呪文「エロイムエッサレム」をとなえる。母に生き返ってほしい一心で。

映像ディレクターの比呂子(橋本環奈)は、かつて伊原と同僚だった。伊原の家を訪ね、春翔が庭で呪文をとなえる姿を見る。彼女の身の回りに怪奇現象が起き、彼女にかかわる人にも被害が及ぶ。美雪の怨念か?

美雪の秘密の過去が明かされていく。そして、土の中から、貞子ならぬ美雪が、生と死のはざまにいる存在として現れ、伊原と比呂子を追いつめる。

結末をどうつけるか…そう来たか!…でもこれで終わりではなく、春翔は美雪の力を受け継いでいたのだ。一度死んで雷で生き返った春翔が、その雷で死ぬ。中田秀夫らしい恐怖感がつながり、張りめぐらされた伏線も回収される。

春翔役の正垣湊都(2012生)は物語展開上大きな役割であり、純粋な子供が大人への恨みをつのらせるなど感情表現が見事であった。また、この作品には、姉の正垣那々花(2006生)も出演していた。



 

(第484話)日本映画落穂拾い(その24)


①『シャイロックの子供たち』
 2023年、本木克英監督。

池井戸潤の小説を原作としたサスペンスドラマ。銀行の支店で現金の紛失事件が起きる。接客係の西木(阿部サダヲ)は二人の行員と事件を探るが、その頃顧客の融資を担当した滝野(佐藤隆太)は架空事業のワナにはまっていた。事件の裏には隠されていたことが明らかになる。お金に人生を狂わされる人間の弱さをついていた。滝野の息子翔を斎藤汰鷹(2010生)が演じていた。



②『杉原千畝』
 2015年、チェリン・グラック監督。

第二次大戦中、リトアニア領事の時、多くのユダヤ人にヴィザを発給して救った杉原千畝は「日本のシンドラー」と呼ばれた。一方で諜報外交官として活動し、日本に情報を発信していた面もあり、その姿を追ったもの。ある日、日本からの郵便物を持って歩いていた時に、少年ソリー(フィリップ・シュツェプコフスキ)が切手に興味をもち、切手の部分を切り取って渡し、喜ばれたエピソードが加わる。



③『バタアシ金魚』
 1990年、松岡錠司監督。

望月峯太郎の漫画作品を映画化した青春コメディ。小気味良いテンポではぎれが良く、見ていて楽しい。カオル(筒井道隆)は水泳部のソノコ(高岡早紀)に一目惚れして、泳げないのに(自称トンカチと言っている)入部する。泳げるようになろうと水泳教室に入るも、子供たちのじゃまになり、コーチ(白川和子)の家に泊まり込んで特訓を受ける。画像下はコーチの孫で氏名不詳。ソノコにアプローチしようも、「女のくさった奴のケツをふく紙」の値しかないと見限られてしまう。

一方でライバル校のウシ(浅野忠信)もソノコに恋心をいだき、二人は張り合う。カオルのダサいけど、真剣で一途な姿をみせても、ソノコは心のバランスを崩し、太ってしまう。青春特有の悩みや挫折、紆余曲折を描いて、ラストは二人で着衣のままプールに飛び込みハッピーエンド。ここでのセーラー服姿の高岡早紀のカットは有名である。



④『銀河鉄道の父』
 2023年、成島出監督。

「このバカ息子!」、宮沢家の長男賢治(菅田将暉)と父政次郎(役所広司)との親子の物語。家業の質屋を継がず、夢を追って我が道を行く賢治。妹のトシも味方をし、父もつい甘やかす。そんなトシも亡くなり(「永訣の朝」は有名である)、賢治も病気になり37歳で亡くなる。父の視点から描かれ、愛情が伝わる作品だった。賢治の弟清六を番家一路が演じていた。



⑤『戦場のメリークリスマス』
 1983年、大島渚監督。

第二次大戦中、ジャワ島での日本軍俘虜収容所での出来事を描いたもの。英国陸軍中佐ロレンスをトム・コンティ、少佐セリアズをデヴィッド・ボウイ、日本軍陸軍大尉ヨノイを坂本龍一、軍曹ハラをビートたけしなど豪華なキャスト。ヨノイは反抗的なセリアズに苦労するも、次第に彼に魅せられていく…。セリアズの回想シーン、彼の少年時代をクリス・ブラウン、弟をジェームズ・マルコムが演じていた。



⑥『大名倒産』
 2023年、前田哲監督。

浅田次郎の原作による時代劇コメディ。借金まみれの藩を四男小四郎(神木隆之介)が継ぐことになり、庶民から藩主になったものの、借金を返せねば切腹という。そして、次から次へと難題がふりかかる。この危機をどう乗り切るか、その悪戦苦闘ぶりが面白く、裏に隠された陰謀もあばかれる。冒頭で小四郎の子供の頃のエピソードが描かれる。山田暖絆(2014生)が演じていた。



⑦『64ロクヨン』
 2016年、瀬々敬久監督。

横山秀夫の小説の映画化。7日で終わった昭和64年、少女誘拐事件が起こり、死体で発見される。平成へと時が移る中で起きた事件は平成14年、時効まで一年となる。警察内部での問題、記者クラブとの軋轢があり、広報官の三上(佐藤浩市)は職務上のことに加え家庭の問題もかかえていた。そんな時、新たな少女誘拐事件が起こる。かつて捜査員で退職した幸田(吉岡秀隆)が関わっていた。彼の息子を佐藤優太郎が演じていた。



⑧『なのに、千輝くんが甘すぎる。』
 2023年、新城毅彦監督。

亜南くじらのコミックを原作とするゆるゆる、キラキラの青春ラブストーリー。失恋した真綾(畑芽育)にモテ男子の千輝(高橋恭平)が声をかけ、片思いごっこを提案する。周りにバレないように、本物の恋にならないようにと始めたゲームの行方は?千輝の子供時代、家庭での両親のことで悩んだ忘れられない思い出がわずかに描かれる。演じていたのは末永光(2008生)。




 

(第485話)アメリカ映画落穂拾い(その29)


①『ブルース・ブラザース』
 1980年、ジョンソン・ランディス監督。

アクションにミュージカルの要素が入り交じったドタバタコメディ。黒いスーツにサングラスのジェイク(ジョン・ベルーシ)とエルウッド(ダン・エイクロイド)の軽妙な演技が印象的。彼らが育った孤児院が閉鎖の危機にあり、二人はバンドを再結成して資金を集めることにして、かつての仲間を呼びもどす。孤児たちに「お前たちの家を守るために歌うんだ」と言い、子供たちは宣伝を手伝う。



②『ブルー・ジャスミン』
 2013年、ウディ・アレン監督。

主人公はジャスミン(ケイト・ブランシェット)、ニューヨークでセレブ生活を満喫していたが、夫が投資詐欺で逮捕され、上流階級から転落する。それでサンフランシスコに住む妹のジンジャーを頼って来る。彼女はシングルマザーで、二人の息子マシュー(ダニエル・ジェンクス)とジョニー(マックス・ルーサーフォード)がいる。
ジャスミンはプライドが貧乏を許さない。再起をかけて奮闘するも空回りしたり、ジンジャーも彼氏との関係にいろいろある。ラストは、ジャスミンは「ドワイトと結婚し、セレブの生活に戻る」と家を出るが、負け惜しみなのか、希望のもてるエンディングなのか?

ジャスミンの義理の息子ダニーの少年時代をチャーリー・ターハン(1998生)が演じていた。ケイト・ブランシェットは本作でアカデミー賞主演女優賞を受賞した。



③『アウトロー』
 1976年、クリント・イーストウッド監督。

アメリカ建国200年記念作品。南北戦争中の1865年、北軍の名を借りた悪党どもに妻子も家もなくしたジョージー(クリント・イーストウッド)は、復讐のためゲリラ部隊の仲間に入る。終戦となり北部への投降も拒否し、孤軍奮闘する。追っ手に追われ、先住民との交流もあるが、重傷を負いながらも首謀者テリルを倒す…。息子役を実子のカイル・イーストウッド(1968生)が演じていた。



④『パール・ハーバー』
 2001年、マイケル・ベイ監督。

陸軍航空隊のパイロットのレイフ(ベン・アフレック)とダニー(ジョシュ・ハートネット)は幼い頃からの親友である。看護士イヴリンをめぐってのエピソードがあるが、そんな時に日本軍の攻撃隊がパール・ハーバーを目指していた…。冒頭で幼い二人が飛行機で遊ぶシーンがある。レイフをジェシー・ジェームズ(1989生、画像右)が、ダニーをレリー・マクレンドン(1990生)が演じていた。



⑤『アナライズ・ミー』
 1999年、ハロルド・ライミス監督。

マフィアのボス、ポール・ヴィッティ(ロバート・デ・ニーロ)が主人公。あまり期待せずに見たら、これが面白い。ポールはパニックに襲われノイローゼ気味になり、精神科医のベン(ビリー・クリスタル)を訪ねる。ベンは結婚式を控えていたが、ポールに邪魔されたりするも、二人は親密な?関係になる。ポールの4人の子供のうち末っ子のアンソニーをヴィニー・ヴェラが演じていた。



⑥『ジャッキー ファーストレディ最後の使命』
 2016年、パブロ・ラライン監督。

ケネディ大統領が凶弾に倒れた事件から国葬されるまでの4日間を描いたもの。事件から一週間後にジャーナリストが夫人ジャッキー(ナタリー・ポートマン)から夫人が見た事実を取材した。息子のジョンJr. をエイデン・ワインバーグとブロディ・ワインバーグの双子が二人一役で演じていた。



⑦『HACHI約束の犬』
 2009年、ラッセ・ハルストレム監督。

『ハチ公物語』(1987)の米版リメイク。大学教授のパーカー(リチャード・ギア)は駅で子犬と出会う。首輪に「八」の字があり、日系人から「ハチ」と読むと教えられ、「Hachi」と命名する。毎日夕方の列車で帰る主人を駅前で待つ…。パーカーの孫ロニー(ケヴィン・デコステ)が、MY HERO の題でのスピーチでハチのことをクラスメートに語る形で進む。



⑧『ミーガン』
 2023年、ジェラルド・ジョンストン監督。

両親を亡くしたケイディ(バイオレット・マッグロウ)は叔母のジェマに引き取られる。ケイディは叔母が開発したAI人形のミーガンを与えられ、まるで姉妹のように仲良く過ごす。ミーガンはケイディを守るように言われている。学校の体験入学で野外活動の時一緒に組んだブランドン(ジャック・キャシディ)がケイディに意地悪をすると、ミーガンが現れ、彼はミーガンを連れ去ろうとして悲劇が…。




 

(第486話)その他の国の映画の少年(その3)

いつかの君にもわかること

2020年、伊/ルーマニア/英映画。ウベルト・パゾリーニ監督。

33歳の窓拭き清掃員ジョン(Jスルー・ノートン)はシングルファーザーで、4歳の息子マイケル(ダニエル・ラモンド)を育てている。

ジョンは不治の病で余命宣告も受けている。彼は息子のために、理想の家庭を求め、養子縁組先を探し、体験的なステイをさせたりする。いわば、人生最大の決断を下さねばならない。

ともすると、お涙頂戴的な安易な描き方になりがちだが、ことさらドラマチックにもせず、感傷的なものも排し、淡々としかも繊細に描いている。意図的にしない分、心に訴えるものが強くなる。

ある日マイケルは昆虫が死んでいるのを見つけ、そこで死とは何かを父に聞く。

ジョンは残された時間を悩んだりしたはずだが、成長を見届けることが出来ない息子のために何を残せるか。そして書いた沢山の手紙、その一つに「君が運転免許を取った日に読むこと」とあるように、成長の節目節目に父親からのメッセージを残すことにした。

その心配り、優しさがたまらない。ジョンは仕事を引き継ぎ、ラストも自然な別れにしている。


ダークグラス

2022年、伊/仏映画。ダリオ・アルジェント監督。

『サスペリア』から45年、82歳の監督による本作は、アルジェントらしいホラーを最初から見せるが、かつての勢いは減退している。

コールガールが次々と殺される事件が発生する。ディアナ(イレニア・パストレッリ)は、相手をした男の白いバンに追われ、追突され、中国人一家の車と衝突する。

ディアナは視覚脳損傷で視力を失う。中国人一家は父が即死、母は昏睡状態に(いずれ死ぬ)、息子のチン(シンユー・ツァン)が残され施設に。

ディアナはサングラスをかけて歩行訓練をし、盲導犬と生活をする。一度施設にチンを訪ねる。その後チンは施設を抜け出して彼女の家に来る。一緒にいることで少しほっこりとするが、調べに来た警察官、彼女の面倒をみるリタなど、次々と白いバンの犠牲になる。

追われるディアナとチンの逃避行。夜のシーンはデジタル撮影の欠点が出てしまった。暗いシーンが延々と続くし、水ヘビは余計であった。

犯人は犬のブリーダーのマッテオで、初対面のときディアナは臭いと思わず言ってしまったが、彼はとんでもないサイコパスで、彼女にかかわる人を次々と殺していった。良し悪しは別として、アルジェント節がただよう画面と音楽の作品だった。

少年チンは施設にいる時は里子に出されるのを嫌い、ディアナに救いを求め、彼女を支え世話をしたが、そのやさしさをシンユー・ツァンはよく演じていた。ラストは里親のもとへと空港でディアナと別れ、新たな希望が期待されるシーンで終わった。

スペルズ 呪文

2019年、ロシア映画。アレクサンドル・ドモガロワ監督。

オルガ(アンジェリーナ・ストゥレチーナ)とアルチョム(ダニイル・ムラビエフ)の姉弟は、母が車で事故死をし、父は海外にいるので寄宿学校に入る。その学校は人里離れた所にあり、19世紀の建物は独特の雰囲気がある。

心のよりどころをなくしたアルチョムは、母が助けてと呼ぶ声が聞こえたと言い、そして母の姿を見たと言う。

鏡に映る姿、鏡の向こうの世界、そして湖や水たまりに映る姿など思わせぶりな場面もある。願いをかなえてくれるスペードの女王が村の子供たちを殺したエピソード、彼女は黒悪魔の姿で現れ、アルチョムはこの悪魔に心を奪われる。

わけありの施設であり、級友の死で学校は閉鎖になる。アルチョムはママと残ると、建物内にとどまる。幻影が現れたり、姉弟ともに臨死体験をする。そこから蘇生し、ハッピーエンドになるかと思ったが…。

ジリジリと押し寄せる陰うつな恐怖…ロシアのホラーは独特で、ああおそロシア、と言いたくなるが、ツッコミどころもある。

アルチョムはかわいらしい。まだママに甘えたい年頃だ。そんな少年をダニイル・ムラビエフはよく演じていた。画像の鏡のシーンは少し恐ろしかった。



 

(第487話)日本映画の少年(その127)

海岸通りのネコミミ探偵

裕太

2022年、進藤丈広監督。

行方不明になったペットを捜す探偵を描いたもの。

主人公は猫塚照(牧島輝)で、子供の頃(榊原蒼士)、猫と出合いミミと名付ける。青年になった今、二代目ミミがいなくなり、ペット探偵の猿岡(和田正人)に捜索を依頼する。

見つかるも、わけあり夫婦の手に渡っており、ミミの幸せそうな姿を見て、猫塚は彼らに託す。捜索の経費を払えないので、助手として働くことに。

三浦裕太という少年(菊池爽)が猫のゴンタを捜してほしいと依頼に来る。両親は離婚の危機にあり、猫塚は自分と境遇が似ている裕太に感情移入する。ゴンタは見つかるも、子はかすがいの予定調和にはならなかった。

起伏の少ない、ゆるいテンポで進み、深みに欠けるが、自然と裕太を応援してしまい、ゴンタが見つかったあたりから、少し生き生きとしてくる。

照と裕太                                 少年照

L change the world

2008年、中田秀夫監督。

『デスノート』のスピンオフ作品。名探偵L (松山ケンイチ)がまた難事件に向き合う。

タイのある村で新種のウィルスによるバイオテロが発生。環境テロ組織が開発したウィルス兵器の陰謀とは?

そのバイオテロ事件唯一の生存者のBOY(福田響志)は、F (波岡一喜)から首飾りのロケットを預かり、彼の手引きで日本に来る。さまざまな検査を受け、最初はLを警戒するが少しずつ慣れていく。

BOYは数字や数式の能力がありそれが役に立った。最後は施設に引き取られることになり、L は「ニア」と名付ける。福田響志(2000生)は良く演じていた。

環境保護団体ブルーシップこそバイオテロを企てる組織であり、ムダに増えた人類削減計画をもくろむ。

スピンオフ作品であるとはいえ『デスノート』と関連づける必然性はあまりない感じである。
ラスト、飛行機での感染が広がる危機は、タイの空港を借りきっての撮影だという。迫力があった。

ちひろさん

ちひろとマコト

2023年、今泉力哉監督。

お弁当屋のちひろさん(有村架純)は、元風俗嬢で本名は綾、その明るい笑顔と誰にでも親切で面倒見が良い。

「ちひろさんとともに」とでも言うべき作品で、彼女とかかわるホームレスのお年寄りから、彼女を追っかける高校生の久仁子(豊嶋花)、小学生のマコト(嶋田鉄太)まで温かい雰囲気で包みこむ。まるでほかほか弁当のようだ。

マコトとのかかわりが良い。母子家庭で寂しさをかかえている。ある日ちひろにおもちゃのヘビでおどろかす。ハンバーグ弁当をごちそうになり、「ママの作る焼きそばもおいしい」と言う。

その母親が現れ、余計なことをするなと言う。さらに誕生日にもらった小さな花束も、ちひろの入れ知恵だと因縁をつけるが、ちひろは否定し、毅然ともう少し子供に向き合ってほしいと言う。

マコトはやがて久仁子とも仲良くなる。ある日、マコトは鍵をなくして家に入れず、おなかをすかしていて、久仁子はおにぎりを作り、届ける。

他にも不登校の女子高生や風俗の元店長らとのエピソードがあるが、屋上でちひろさんとその仲間が集い、おだんごを食べる姿はほのぼのとする。亡くなったホームレスのおじいさんの席も忘れていない。こうしてちひろさんは去る。

ラスト、牧場で働くちひろさん、また笑顔を絶やさず、新たな希望で生きていく姿が見てとれた。

久仁子とマコト

マコトは寂しさからいたずらをするが、根は優しい心の持ち主で、嶋田鉄太(2014生)はよく演じていた。他に、ホームレスの老人をからかったりする小学生を宮本琉成、海津陽、智崎凱斗らが演じていた。



 

(第488話)日本映画落穂拾い(その25)


①『湯道』
 2023年、鈴木雅之監督。

湯の作法の「湯道」なるものを窮めればそれは喜劇に通じる。小山薫堂のオリジナル脚本は快調だ。並行して存亡の危機にある銭湯のまるきん温泉が描かれるが、そこには理屈ぬきに銭湯を愛する人々がいる。この作品を見て、温かい気持ちになる。子供時代の回想シーンで、銭湯の兄三浦史朗(生田斗真)を長尾翼(2014生)が、弟悟朗(賓田岳)を嶋崎希祐(2017生)が演じていた。



②『デスノート Light up the NEW world』
 2016年、佐藤信介監督。

ノートに名前を書かれた人は死ぬという『デスノート』(2006、金子修介監督)の続編。「キラ事件」から10年後大量殺人事件が起きる。刑事三島(東出昌大)はLの後継者竜崎(池松壮亮)の協力で、6冊のデスノートが存在することを知る。だが今ひとつストーリーに入りこめず、脚本も整理が必要な感じだ。竜崎の少年時代を山崎竜太郎(2002生)が演じていた。



③『劇場版 TOKYO MER~走る緊急救命室~』
 2023年、松木彩監督。

救命医療チームの活躍を描いたテレビドラマの劇場版。冒頭、炎上する航空機から人々を救い、困難な中緊急手術をするシーンから始まる。次は横浜ランドマークタワーでの火災で取り残された人々や急病の人を救う。主人公の喜多見(鈴木亮平)の身重の妻もそこにいた。多分にご都合主義で、先の見える展開であるが、見せる。倒れたおばあさんを懸命に救うが、その孫の翔馬を森優理斗が演じていた。



④『1秒先の彼』
 2023年、山下敦弘監督。

台湾映画『1秒先の彼女』(2020)のリメイクで、主人公が男性に変わっている。郵便局に勤めるハジメ(岡田将生)は子供の時(柊木陽太)から人よりワンテンポ早く行動する。局に来るレイカ(清原果耶)とは、子供の頃からつながりがあったことがわかる。京都を舞台に、後半は天橋立の郵便局の私書箱が二人を結びつけ、それぞれの視点で描き、ファンタジー性あふれるものとなっていた。



⑤『渇水』
 2023年、高橋正弥監督。

河林満原作の映画化。給水制限中の前橋市を舞台に、水道代滞納者に督促をする水道局員岩切(生田斗真)が主人公。さまざまな滞納者がいる中で、取り残された二人の姉妹の家では、心が迷うが、規則に従わねばならない。岩切自身、妻子が家を出ており、課題をかかえている。息子タカシ(小山蒼海、画像上)を海に連れていきたいと思っている。同僚と飲んだ夜に駆けてくる男の子(吉岡弘樹)に「子供が出歩く時間じゃないだろ」と注意すると水鉄砲で水をかけられる。 社会問題に直面し、どうにもならない岩切の険しい、時にうつろな表情が印象的だ。とうとう止水している公園の水栓を開けてしまう。そして恵みの雨が。

ラストは息子から、海に行きたいと電話が来る…。これが家族再生の手がかりと安易に考えてしまいがちとはいえ、子はかすがいに違いない。




⑥『嘘八百 京町ロワイヤル』
 2020年、武正晴監督

目利き(?)古美術商小池(中井貴一)と腕利き(?)陶芸家野田(佐々木蔵之介)の骨董コンビの嘘騒動、第2作。京美人の橘志野(広末涼子)が小池に、古田織部の茶器「はたかけ」が母がだまし取られたと言ってくる。野田は贋作づくりに精を出す。テレビ中継を入れた騙し合いが面白い。志野の息子はオムライスが好きで、小池に喫茶店でごちそうになる。画像は後日母と。少年の氏名は不詳。



⑦『嘘八百 なにわ夏の陣』
 2023年、武正晴監督。

シリーズ第3作、また古美術商小池(中井貴一)と陶芸家野田(佐々木蔵之介)のクセモノコンビ同士がくすぶっている。秀吉の7品の最後、鳳凰の茶器を巡ってうさんくさい人たちのだましあい、結局は夢、幻に終わる。TAIKOHというカリスマ波動アーティスト(安田章大)もからんでいるが、彼は幼少の頃(高田幸季) 、秀吉の紙芝居を見て夢をふくらませる。



⑧『ブルークリスマス』
 1978年、岡本喜八監督。

国営放送報道部員の南(仲代達矢)は、失踪した兵藤博士を調べていくうちに、頻繁に現れるUFOに遭遇した人の血が青くなるという事実を知る。報道しようとするも、政府から圧力がかかる。外国でも同様だった。隠された謀略とは?後半は国防庁職員の沖(勝野洋)と西田(竹下景子)のラブストーリーにシフトする。南の息子修を松田洋治(1967生)が演じていた。




 

(第489話)アメリカ映画落穂拾い(その30)


①『50回目のファースト・キス』
 2004年、ピーター・シーガル監督。

ハワイが舞台。交通事故による記憶障害で前日の出来事を全て忘れてしまうルーシー(ドリュー・バリモア)、そんな彼女に惚れたプレイボーイの獣医ヘンリー(アダム・サンドラー)、二人の恋の行方を追ったラブストーリー。ヘンリーの友人ウラの子供たちをアダム・フエゴス、ジェームズ・リー、カイル・ムーア(女の子)、キーリー・オルモス、タシェ・ウエスギが演じていた。



②『アメリカン・スナイパー』
 2014年、クリント・イーストウッド監督。

クリス・カイル(ブラドリー・クーパー)は、子供の頃(コール・コニス)から銃に慣れ親しみ、弟のジェフ(ルーク・サンシャイン)がいじめられていたら相手をやつけるほど正義感が強かった。軍に入り、厳しい訓練を経て、スナイパーとして中東に4回派遣される。緊迫感に満ちた場面が多い。務めを全て終えて帰国してから凶弾に倒れるという皮肉な結末を迎える。



③『コールド・クリーク 過去を持つ家』
 2003年、マイク・フィギス監督。

都会から抵当流れの田舎の大邸宅に引っ越してきた一家、両親(デニス・クエイド、シャロン・ストーン)と二人の子供。これまでならわけありの超常現象にみまわれるパターンだが、この作品では、前の住人だったというデイルが現れ、一家へのいやがらせをする。そこには隠された秘密が…。姉をクリステン・スチュワート、弟ジェシーをライアン・ウィルソンが演じていた。



④『ミニミニ大作戦』
 2003年、F・ゲイリー・グレイ監督。

1969年作品のリメイク。プロのフィクサーのチャーリー(マーク・ウォールバーグ)をはじめ特殊技術をもつ面々の窃盗団が3500万ドルの金塊を盗むが、裏切り者とその手下に奪われる。1年後それを奪い返そうとする…。ベニスでのモーターボートの追っかけ、フィラデルフィアでのMINIクーパーの追っかけなど見所は随所にある。チャーリーの子供時代をジョエル・ホーマン(1994生)が演じていた。



⑤『ザ・コンサルタント』
 2016年、ギャヴィン・オコナー監督。

クリスチャン(ベン・アフレック)は、数字と殺人テクニックに特殊な能力を発揮するサヴァン症候群の会計士である。冒頭で子供の頃(セス・リー、画像上)、自閉症のクリスが「ソロモン・グランディ」の詩をとなえながらジグソーパズルをするエピソードが描かれる。父からは自閉症の子は異質だと思われ、その異質さを人は恐れると言い、自分の身を守るための訓練を施された。

クリスはある企業の使途不明金の調査をし、金の不正な流れを指摘するが、命を狙われることになる。最後にわかる暗殺者のリーダーは意外な人物だった。自閉症については、歴史上の人物を引用するなどして説得力をもたせている。ラストで、6歳の男の子について、親が医師に相談する様子が描かれるが、その子をロマン・スピンク(画像下)が演じていた。



⑥『エリザベスタウン』
 2005年、キャメロン・クロウ監督。

会社で大失敗したドリュー(オーランド・ブルーム)の絶望から再生へのドラマ。父の訃報が入り、エリザベスタウンへ。CAのクレアとの出会い、親戚の人たち、父の友人たちとのふれあいを重ねるうちに生きる喜びを取り戻していく。火葬後、クレアからの旅のマップに従い車を走らせ、遺灰を散布する。いとこのジェシーの息子サムスンをマクスウェルとライド・スティーンの双子が演じていた。



⑦『ディファイアンス』
 2008年、エドワード・ズウィック監督。

1941年ナチスがベラルーシに侵攻し、ユダヤ人狩りをする。両親を殺された兄弟たちは森に逃げるが、すでに逃げてきていた他のユダヤ人たちと共に生きていく。実話に基づくという。食糧不足の辛さ、赤軍パルチザンのこと、ドイツ軍に追われ、生き延びるために抵抗する。家族を殺され、床下に隠れて助かった少年アーロンをビル・マッケイが演じていた。



⑧『ソフト/クワイエット』
 2022年、ベス・デ・アラウージョ監督。

幼稚園教諭のエミリー(ステファニー・エステス)ら6人の女性は白人至上主義で、マイノリティへの偏見をもっている。彼女らは食料品店でアジア系の姉妹と口論になる。その後彼女らは二人の家に忍び込み荒らす。それがとんでもない事態に発展する。冒頭で母の迎えを待つ小学生のブライアン(ジェイデン・リーヴィット)と親しく話をする。そんな彼女も集団心理で犯罪に手を染めてゆく。後味の悪い作品だ。







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